「一(いち)」
万丈目さんは三丁目且つ七丁目の両方に住んでいる。
彼の成績はオール丙だが、上下関係にこだわることを不可とするのは並大抵のことではない。
「 、(てん)」
伊勢丹で主人と牛丼を食べた。それだけで花丸な一日だ。
「ノ(の・はらいぼう)」
私は貧乏なので、タクシーに乗るなんて久々のことだ。
「乙・乚(おつ)」
九歳の娘は恋する乙女だ。お相手はこぼして乾いた牛乳がしみついた服を着た乞食で、私生活の乱れが心配だ。
「亅(はねぼう)」
彼は争い事が明日終了すると予言した。
「二(に)」
五人の亜細亜人が井戸端会議をしている。そのうち二人は互いに惹かれ合っている。
「亠(なべぶた・けいさんかんむり)」
交流のあった京都の料亭の主人が亡くなった。享年75歳だった。
「人・亻・𠆢(ひと・にんべん・ひとやね)」
令和の今、何を以て企業で働くのだろうか。
知人の紹介で参加した催し物で余り物どうしが出会い、相合傘で倉へ帰った。
「儿(ひとあし・にんにょう)」
元気でリア充な私の兄は光のような存在だ。
兄は甘党で、コーヒーが苦手なのを克服したがっている。
兄が先に幼児だったおかげで一兆円分の免税を受けた。
「八(はち)」
公共の場である兼六園で、八人の兵士が武具を披露する祭典が開かれた。
「冂(どうがまえ・けいがまえ・まきがまえ)」
再生紙が使われたその本は一冊1000円だった。
「几(つくえ)」
凡人を処す。
「刀・刂(かたな・りっとう)」
創作演劇の鑑賞券を初めて分割払いで買った。便利な世の中になったものだ。
劇場の前に到着すると、観客が規則正しく列をなしていた。その傍らでは剛毛の刑事が週刊誌を解剖し、除草剤を撒きながら草を刈り、木を切っていた。
「力(ちから)」
前半戦は劣勢だったが、加勢を募ったところ、勘の鋭い勇者が効果的な労働に務めてくれたおかげで勝利をおさめた。
勇者の功績として勲章が贈られた。
「匕(ひ)」
化けものは北にいる。
「十(じゅう)」
彼は南高校の卒業生で、千升計算を電卓を使って解いた卑劣な人だ。みんなで協力して解けば半分以下の十秒で終わるというのに。
記念に午後は博物館へ行こう。
「卩・⺋(わりふ・ふしづくり)」
だし巻き卵を安く卸すのは危険なので、押印は即却下された。
「厂(がんだれ)」
原っぱの厚さを測るのは厄介な仕事だったが、ようやく5厘と判明した。
「ム(む)」
む、参加者が去ってゆく。
「又(また)」
叔父が叙述した収納ケースの取扱説明書は、こまかく言及されていて分かりやすい。
又、双子の友人は取扱説明書を受け取って、ありがとうと同時に反応した。
「口(くち)」
遣唐使要員として派遣の命令を受けたが、間違えて呉国に来てしまった。
呉国の皇嗣は合同で周りの官吏を司っていた。
皇嗣に不吉な俳句を贈呈したが、哀しいことにセンスの古さを問われてしまい、私は喪に服した。
「土(つち)」
本塁打の朗報を聞きつけた在日外国人が食堂を圧迫し、入り口が塞がれている。
その勢いで執務官の墨汁が垂れた。
「士(さむらい)」
境井仁は壱岐島で酒売りの堅二と再会した。
仁の戦い方は強壮なお士(さむらい)さまとは言えない。声を潜めて蒙古を闇討する、いわば冥人だ。
「夕(た・ゆうべ)」
夕べにうたた寝をして、夢を見た。
目覚めると外には夜空が拡がっており、多くの星が瞬いていた。
「大(だい)」
将軍の夫人たちが暮らす大奥は、奇怪で奔放な場だ。
部屋の中央では天にも昇るほどの爽やかな音楽が奏でられている。
一方、奨学金を奪われて失った太った夫人が、興奮して奈落に落ちた。
僕と契約して魔法少女になってよ。
「女(おんな)」
妥協して不細工な容姿の女委員長と付き合っているが、毎日妄りに威張り散らされて散々だ。
「子(こ)」
学校で1人孔雀に餌をやり、季節が過ぎてゆくたびに孤独を感じている。
子孫をのこして家系を存続させることが最大の親孝行だと思うのに。
「宀(うかんむり)」
富山の寮に寄宿して寝泊まりしている。
入居の審査は緊張したが、寡黙な私を寮母さんは寛大な心で受け入れてくれた。
人付き合いの苦手な私の性格を察し、丁寧に迎えてくれた寮母さんは宮廷の宝玉のような存在だ。
「寸(すん)」
中尉将軍が寸分の狂いもなく的を射ると、寺の本尊の封印が解けて民衆は長寿へと導かれた。
将軍は封印を解いた理由を尋問され、専ら対人恐怖症になってしまった。
「小(しょう)」
当たりくじの数は少ないが、尚子は小さな望みをかけてくじを引いた。
「山(やま)」
岡山の山岳地帯で険しい峠を越え、岩山の崖を下って岬に降り立つと、海の向こうに島が見えた。海に囲まれそびえ立つ島が神様に見えて、この時から私はその島を崇拝した。
「川(かわ)」
本州を巡る長い旅も終わりが近づき、川のほとりでもの思いに耽る。
「工(え・たくみ)」
巨人は西の果てに左遷され、左官屋として働くことになった。先輩の寸分の誤差もない巧みな技工に感嘆した。
「巾(はば)」
私の総帥と師匠は、常に皇帝の席を争っていた。
総帥は市井の希望となるべく貨幣を配布してくれた。おまけに彼は柔道の黒帯の所持者ときたので、師匠は自分の出る幕じゃないと判断し、故郷に帰ってしまった。
「干(かん・いちじゅう)」
年をとった今、何が起こっても木の幹のように平静と動じない余裕がある。
干からびたミミズは幸せな人生だっただろうか。
「彡(さんづくり)」
錦山彰に彩り豊かな鯉の刺青を施した彫師の元を訪ねた。
錦山彰から多大なる影響を受けた私は、鮒の形の刺青を入れてもらった。
「ッ(つかんむり)」
彼はきっと厳しい孤独を味わっているものだと、私はすっかり誤解していた。
彼の家は単身世帯かと思いきや、実際そこは彼の妻との愛の巣だった。どうやら夫婦の営みの真っ最中のようだった。
「心・忄・㣺(こころ・りっしんべん・したごころ)」
日本国憲法を急いで意訳すると国に迷惑をかけるのではないかと憂慮していた。
しかし、ひそかに恋慕していた慶応大生の彼女が私を恭しく応援してくれた。彼女の優しさに感動し、意訳を完成できた。
思うに、必ず最後に愛は勝つ。
「戈(ほこ)」
平成生まれの親戚の子は、戦いごっこで戯れるのが好きなヤンチャ具合だ。お年玉をあげても戯れるばかりなので、ものを戴いたときには我に礼を述べよと戒めた。
「手(て)」
摩擦で擦れた手のひらを精いっぱい搾った。
才知があり真摯な彼の掌を傷つけるのは後ろめたいが、拳で彼を撃つことは承知の上だ。
「攵・攴(のぶん・ぼくづくり)」
改革を放置する政府が故、民衆は数で攻めて共通の敵を倒そうとしたが敗走した。敷設工事で鉄道が整備されたと敏感サラリーマンが教えてくれた。
「斗(とます)」
シェフの泰斗に想像の斜め上を行く料理を出された。
「斤(きん)」
斥候が1斤のパンを斬り、断面に新鮮なバターを塗った。
「方(ほう)」
南方へ旅に出る家族を施設で旗を振って送り出したが、すぐに旋回して帰ってきた。
「日(ひ・ひへん)」
旧暦では明日から春らしい。
昼から暮れにかけて暫く、曇が暴れるように早く動いていた。
昔は景色の是非を決めるのも容易だった。
今は昆布が旬で、出汁の旨みがよくきいている。
「曰(ひらび・いわく)」
冒険の書に記録するときに流れる曲は、替えのないほど最高の名曲だ。
更に言えば、曽祖父に重曹をかけたい。
「月(つき)」
朕は望月の歌を朗詠して朝廷に捧げた。
朕には服のセンスが有るので、いつの時期でもオシャレである。
「木(き)」
朱い杉の木が生えた山麓で、業者が本の束を廃棄した。
東の街は近未来型に栄えた都市で、条件を満たし審査が通れば年末には柔らかい橋が架かる。成果が出たら朴訥とした末っ子を案内するのが楽しみだ。
「欠(あくび・かける)」
欧米では歓喜の歌が次に流行りそうだ。
金が欲しくて欧米人から借款したが、詐欺に遭い金欠となってしまった。
「止(とめる)」
この歳になって、武士としての道を歩むことを止めた。正しい道は歴史が紡いでくれるだろう。
「歹(かばねへん)」
繁殖させた人が死ぬと、残された人の悲しみは計り知れない。殉職したとなると殊更悲しいだろう。
「殳(るまた)」
殿様はボコボコに殴られ、階段から突き落とされた。
彼は殻破りな人なので、犯人を殺人未遂ではなく名誉毀損で訴えた。
「水・氺・氵(みず・したみず・さんずい)」
大きな泉を越えることを求められているが、水には永遠に氷が張っているので安泰だ。渡る準備はできた。
「火・灬(ひ・れんが)」
炭に火を点けて芋を焼いたが、不注意だったが為に焦げて灰になってしまった。
煮物にすればよかったと後悔しても無意味だ。煩わしい火災にならなかったことを喜ぼう。
「玉・王(たま・おう)」
環境係の班のみんなは理科室で琴を玩んだ。
琴には王の印璽が押されており、現実にも珍しい珠玉の品である。
「田(た)」
由緒正しき天子の男は農畜産業が好きで、畿内には町のように番地で区画された畑がある。
彼は畝に甲虫がいるのが目に留まると、まるで
異世界からの侵略者であるかの如く追い払った。
そんな彼に湖畔に畳を敷くと申し上げるなど畏れ多くてできない。
「白(しろ)」
皇后さまは白い百合のように美しいので皆の注目の的だ。
「目(め)」
県知事は盲人を監督し、時には自己を省みず盾になって看護することを直訴した。
盲人はその直訴に眉をひそめ、真心のこもった相互扶助を望んだ。
「羊(ひつじ)」
群衆の中でひときわみすぼらしい服装なことに羞恥心を覚えた。美しい羊毛のコートを着ている義人を羨ましく思う。
「羽(はね)」
ツバメの雛は親鳥から飛び方を習い、翌朝には自分の翼で巣立っていった。
ツバメが身を翻したときに落ちてきた羽を拾い、翁は寂しさを感じた。
「耳(みみ)」
自分の耳で聞くことの大切さを説くありがたいお話を聖職者から聴いた。
「肉(にく)」
自分の身体は脊髄・胃・背中側の膵臓に至るところまで膨れ上がっており、このままでは腐敗してしまう。
医師にそう言われたときは脅しかと疑ったが、強い肩を育てることで治る可能性を肯定してくれたので、不肖は安心した。
「舌(した)」
宿舎に隣接している店舗で舌磨きを買う。
「虍(とらがしら)」
彼は虐待された過去を持ち、虚弱体質になる虞があったが、今では多くの女性を虜にする虎のように勇ましい男だ。
「虫 (むし)」
融けた蜂蜜は野蛮な液体だ。
「衣 (ころも・ころもへん)」
その袋柄の衣装は裏表が逆で、
和洋折衷の特製デザインだったが、
強盗に襲われて裂けてしまった。
裁縫をして衣装を直したら褒められた。
ちなみに強盗は老衰で死んだ。
「西 (にし・おおいかんむり)」
西空を雲が覆っている。
要するに、覇気のない空だ。
「見 (みる)」
視聴覚室で親が規則正しく並び、授業を観覧している。
「豕 (ぶた・いのこ)」
豚も象も豪猪(やまあらし)もみんな哺乳類だ。
「貝 (かい)」
貿易で輸入された高貴な貝を質屋で買う勝負に勝った。
来賓者が賞金として金貨を貸してくれた。
貧しくて貪欲な私は喜んで来賓者を絶賛した。
負けた対戦相手は責任を負い、生涯童貞を貫くことを誓った。
「車(くるま)」
先輩が管轄している区域では、軟らかい輝きが搭載された軍用車両を所有している。
「辛(からい)」
辛辣な謝辞をいう。
「里(さと)」
里と野原の重さを量る。
「音(おと)」
韻を踏んだ詩を音読する声が響く。
「頁(おおがい)」
預金に無頓着だったあの頃の私は、全財産の現金を盗まれて項垂れた。
今は立ち直って順当に勉強の頂点を目指して頑張っている。須らく類題が頒布されることを願うべきだ。
「鬼(おに)」
鬼頭明里は魔性の女だ。その魅力に魂ごと惚れ込んでしまった。
「鳥(とり)」
鶏も鶴も鳥類の仲間だが、鳴き声は異なる。
◆付録
漢字がそのまま部首のやつ 常用漢字限定
一、乙、二、人、入、八、刀、力、十、又、
口、土、士、夕、女、子、寸、小、山、川、工、
己、巾、干、弓、
心、戸、手、支、文、斗、斤、方、日、月、木、
欠、止、毋、比、毛、氏、水、火、爪、父、片、
牙、牛、犬、
玄、王、玉、瓦、甘、生、用、田、白、皮、皿、
目、矛、矢、石、示、穴、立、
竹、米、糸、缶、羊、羽、耳、肉、臣、自、至、
臼、舌、舟、色、虫、血、行、衣、西、見、角、
言、谷、豆、貝、赤、走、足、身、車、辛、釆、
里、
金、長、門、阜、雨、青、非、面、革、音、風、
飛、食、首、香、
馬、骨、高、鬼、
魚、鳥、鹿、麦、麻、黄、黒、
鼓、
鼻、斉、斎、歯、竜、亀