釜中の魚と轍鮒の急

漢字多めの雑記ブログです

京都、漢字の聖地にて

 

 

今週、仕事で京都へ行ってきた。

 

漢字が好きな人ならご存知だろう、京都には漢字ミュージアムがある。

 

今回の出張は土曜日まで滞在して、せっかくだから最後に現地を観光することにしていた。

 

私にとっては仕事なんかより観光のほうがよっぽどメインイベントだった。

 

3日間に渡る客先訪問を終え、その解放感と京都を観光できることのワクワク感で、最終日の私は浮かれまくっていた。

 

無論、目的は漢字ミュージアムに他ならない。

 

f:id:fuchuunouo:20221217174305j:image

 

四条通りをまっすぐ歩いた先に漢字ミュージアムはあった。

 

 

今年の漢字展」が開催中だったが、残念ながら2022年の「戦」は展示期間前だった。

 

それでもこれまでの「今年の漢字」が並ぶ景色はたいへん見応えがあり、筆勢の猛々しさに目を奪われた。

 

f:id:fuchuunouo:20221217174217j:image

f:id:fuchuunouo:20221217174334j:image

f:id:fuchuunouo:20221217174320j:image

 

 

中でも印象的だったのは、2011年の「絆」の字。

 

f:id:fuchuunouo:20221217174845j:image

 

忘れはしない、東日本大震災のあった年。

 

選ばれたのは「絆」という、泣きたくなるほど前向きな漢字だ。

 

この年は総票数も50万票近くと飛び抜けて多く、「絆」は歴代の「今年の漢字」の中でも最も得票数の多い漢字らしい。

 

つらく苦しい今だからこそ助け合って「絆」を育んでいこう───そんな国民の思いがこの1文字に詰まっているように思えてならない。

 

思いもよらず心が震えた「絆」との対峙であった。

 

 

 

 

 

 

 

もう1つ記しておきたいことがある。

 

 

私にはどうしてもここで見つけたい漢字があった。

 

私にとって最も因縁が深く、それでいて今では最も好きな漢字。「鮒」である。

鮒を好きになった経緯についてはまたの機会に語るとしよう。

 

 

 

さて、漢字ミュージアムには5万字もの漢字が柱に連ねられた「漢字タワー」なるものがある。

 

f:id:fuchuunouo:20221217181332j:image

 

小学校で習う漢字や一般的によく使われている常用漢字はオレンジ色や水色で大きく書かれ、

今では使われることのない極めてマイナーな漢字は小さな黒文字で、

その中間くらいの使用頻度の漢字がピンク色で書かれているようだ。

 

 

私はこの中からどうしても鮒を見つけたく、必死に探した。

 

が、見えにくい場所にあるものも含め5万字から目的の1文字を探し出すことはとんでもない難行で、自分の力で見つけることは叶わなかった。

 

 

スタッフに訊ねたところ、漢字タワーの漢字の並びは完全にランダムだが、色付きの字なら書かれているエリアを調べられるという。

 

 

早速鮒を調べてもらった。

 

どうやら鮒は1階正面玄関向きの面、右側にあるらしい。

 

 

鮒は近い───私は血眼になって辺りを見回したが、エリアが絞り込まれたにも関わらずなかなか見つからない。

 

 

 

一体どこにいるんだ、鮒。

 

途方に暮れて天を仰いだ矢先、

 

 

 

 

 

 

 

─────いた!!!!!

 

f:id:fuchuunouo:20221217183730j:image

(※是非探してみてください)

 

 

 

 

鮒はなんとも分かりにくい場所にちょこんと存在していた。

 

 

目に入った瞬間、嬉しさと安堵で力が抜けていくのが分かった。

 

 

 

 

一体どこまで私を翻弄するんだ、鮒。

 

しかしまあ、鮒のそんなところも好きだし、それこそ私の心を掴んで離さない所以であろう。

 

 

 

 

 

漢字ミュージアムにはもう1つ鮒がいる。

 

f:id:fuchuunouo:20221217203636j:image

 

寿司屋によくあるような、魚偏の漢字がたくさん書かれた湯呑みの大型バージョンが展示されているのだ。

 

 

こっちの鮒はすぐに見つけられた。

 

f:id:fuchuunouo:20221217203858j:image

 

魚偏という枠組の中で、鮒は認知度の高いほうの漢字だろう。

 

 

この湯呑みの鮒はきっと、今までに漢字ミュージアムを訪れたたくさんの人々の目に触れてきたはずだ。

 

好きなものが注目されることは我が事のように嬉しいものである。

 

 

人知れず抱いた誇らしさを胸に、漢字ミュージアムを後にした。

 

 

 

今日出会った「絆」のことはずっと忘れないだろうし、「鮒」のことは今まで以上に好きでいる。

 

 

遠く離れた漢字の聖地に立ち寄れたのだから、出張も悪くないと思えた。

 

 

 

f:id:fuchuunouo:20221217210220j:image

※おまけ

漢字とは全然関係ないのだが、帰りの飛行機で佐渡島上空を通過中に見た絶景を添えておく。